【スタンド考察】プッチ神父のメイド・イン・ヘブンを解説!

メイド・イン・ヘブン/Made in Heaven

破壊力:B
スピード:無限大
射程距離:C
持続力:A
精密動作性:C
成長性:A 

メイド・イン・ヘブン

メイド・イン・ヘブン

メイド・イン・ヘブンのスタンドパラメータ


メイド・イン・ヘブンのスタンドパラメータ

本体名:エンリコ・プッチ

エンリコ・プッチとサイクリック宇宙

プッチ神父理論、覚悟した者が幸福である

時を加速するスタンド


破壊力:B
スピード:無限大
射程距離:C
持続力:A
精密動作性:C
成長性:A

プッチ神父緑色の赤ちゃんと融合し、「天国の時」、必要な重力の「位置」に到達することでC-MOONがさらに進化したスタンド。
スタンド名の元ネタはイギリスのロックバンド、クイーンの楽曲、または同名のアルバムのメイド・イン・ヘブン(Made in Heaven)より。
なお、連載中のスタンド名はレッドツェッペリンの楽曲、ステアウェイ・トゥ・ヘブン(Stairway to Heaven)であった。

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能力は「時を加速させる」。

メイド・イン・ヘブンは小柄で頭部と腕に時計を付け、下半身は馬の頭部と前脚という奇妙な姿の能力顕現型スタンド。
スタンド能力を発現した瞬間から、宇宙全体の時間を加速し始める。
宇宙を伝播する重力を利用して少しずつ加速を行なっているようだ。
加速当初は数倍程度の時間の加速であるが、数十倍、数百倍と時間とともに(加速している時間の中でこの表現はおかしなことであるが)、一気に加速していき、無限大にまで時が高速に流れる。

時が加速して太陽が帯状に見える

そして、生物はこの時間の加速に全くついていけない。
もし、生物が時間の加速についていっているならば、同じ速度で走る2台の車からお互いを見ると止まって見えるように、おそらく時間が加速していることに誰も気づかないだろう。
しかし、メイド・イン・ヘブンの時の加速に対して、生物は対象外であるため、生物を介さない事象の全てが高速で完結する。

降り出したにわか雨は一瞬で降り切って身体はずぶ濡れになり、そして次の瞬間には衣服は乾いている。
目の前の崩れそうな瓦礫は、落ちたところを視認できないスピードで落下する。
漫画家はそのペンがすぐに乾いて漫画が描けず、冷凍室での作業員は数秒で数十時間を零下で過ごすことになり凍死する。
カセットテープからの機械音声は高速再生され、とんかつにかけるソースは一瞬で皿にぶちまけられ、自動車や航空機は恐ろしい速度で移動するために事故を多発させる。

時が加速して、生物はそのままだがコップは高速で落下する

生物がついていけない時の加速は大惨事を多発させてしまう。
その異常な世界の中で、プッチ神父だけが時の加速についていける。

「時の加速」に置いて行かれている徐倫や承太郎からすると、プッチ神父が歩くだけで時速300キロを越えるスピードに見える。
そのスピードから繰り出される手刀は、メイド・イン・ヘブン自体のパワーは低いにも関わらず必殺の一撃となる。

加速中のプッチ神父を相手にすることは事実上不可能で、近距離パワー型スタンド最強格のスタープラチナストーン・フリーであってもダメージを与えることもガードすることも不可能である。

なぜならば、プッチ神父の視点からすると、全ての生命体とスタンドは自身の何十分の一という「超スロー再生」のようなスピードで動いているので、十分気をつければ見てからでもオラオラのラッシュを回避することは容易なのである。

唯一、突破口はこの無敵のスピードは時の加速中のみであり、メイド・イン・ヘブンとプッチ神父自身の戦闘力は並レベルであり、人間以上の存在になっているわけではない点である。
作中、徐倫エンポリオをイルカにくくりつけて逃がすことができたのもこのため。

イルカにエンポリオをくくりつけて逃がす徐倫

どんなに超スピードで動けるとしても、プッチ神父は水泳の達人でもなければ、イルカよりも長く泳ぎ続けることが出来るわけでもないため、精々数十メートルの距離を稼げば、プッチ神父はイルカに追いつくことが出来なくなる。
もしくは追いつけたとしても、海のど真ん中で唯一人、誰の助けもなく陸地に戻れなくなるのである。



さて、メイド・イン・ヘブンの能力の真価は「時の加速」の先にある「宇宙を一巡させること」である。
無限大まで時間が加速していくと、あまりの公転速度に太陽はもはや光の帯状に見えるようになる。
膨大な時間の経過に食料や死体は腐り果て、衣服やモノは風化し、大陸移動で地が割れ海は裂ける。

宇宙は終わりを迎え、「一巡」する。
地球や宇宙は「特異点」へと収束していき、「宇宙の終焉」を迎え、新たな宇宙が創成される。
これが一巡した「新しい世界」である。

そして、この「宇宙の一巡」に2012年3月21日時点での全ての生物を連れて行き、新世界に着地する。
「新しい世界」に前の世界の生物がたどり着くことで、その生物が辿ってきた「歴史」、「運命」も持ち込まれる。
このため、「新しい世界」は結果から原因を創られるかのごとく、「歴史」がつくられる。
すなわち、Aという人物が新世界に到達すると、Aの親の人生があり、結婚してAが生まれていることになり、そのまた親の人生があり、というようにAが存在することでその系譜も全て「新しい世界」の過去に書き込まれる。

よって「新しい世界」は、前の世界と些細な差はあれどほぼ同様の「運命」を持った世界となる。
プッチ神父は何故、わざわざ宇宙を一巡させて同じ世界を創り出したのか?
狙いは2点ある。

1点目は「因縁」の精算である。
時の加速が開始した時点で死亡している人物はメイド・イン・ヘブンが前の世界に置いて来ている。
すると、前の世界で死亡した人物は「新しい世界」にもいるにはいるのだが、微妙に異なる別人となっているのである。

これは前の世界に「魂」や「血統」と絡み合った「因縁」を置いて来ているためである。
輪廻転生の「業(カルマ)」を晴らしたかのように、「運命改変」される。
これによりプッチ神父は「ジョースター家との因縁」を消し去っている。
「新しい世界」の承太郎徐倫も存在しないし、DIOは吸血鬼にもなっていないと思われる。
もはや、プッチ神父の野望を止めるものはいない。

2点目は「全人類への幸福」である。
「宇宙の終焉」を乗り越えて着陸した生物は、その終焉までの「運命」を体験しており、「精神」に記憶している。
「新しい宇宙」は前の世界と同じような「運命」を繰り返すが、全人類が5年後に何が起きるかを知っている。

宇宙は一巡し、人類は未来を精神で経験する

人がいつ出会い、別れるのか。
時代がいつ変わり、戦争がいつ起きるのか。
自分が誰を恋し、誰を憎むのか。
自分はいつ子供を産み、その子供がどんな成長をするのか。
誰が犯罪を犯し、誰が発明や芸術を生むのか。
人類全員が知っている。

そして、その運命は決して変わらない。
変わらない未来を「覚悟」できる。
明日「死ぬ」と分かっていても「覚悟」があるから「幸福」である。
「覚悟」は「絶望」を吹き飛ばす。
これがエンリコ・プッチが求めた「天国」である。

未来を知って抗おうとも、「運命」は決して変えることが出来ない。
しかし、「覚悟」はできる。
「運命」に翻弄され、妹を喪ったエンリコ・プッチは「覚悟」こそが人生を乗り越えるものに変えると確信している。
その思想を等しく人類に与えようというのがメイド・イン・ヘブンである。

なお、メイド・イン・ヘブンの能力者であるプッチ神父と恐らく神という概念のみがこの「運命」を変えることが出来る。




魂の重力と特異点

真の能力は「魂の重力を極限増大」。

エンリコ・プッチは緑色の赤ちゃんのグリーン・グリーン・グラス・オブ・ホームC-MOONの能力を経て、「空間」と「重力」が密接な関係にあることをスタンドと体感で学習した。
そして、「天国の時」の「位置」に到達した時、「時空」と「重力」の関係を会得した瞬間にC-MOONはメイド・イン・ヘブンへと進化した。

位置を感じで輝き出すプッチ神父

メイド・イン・ヘブンはC-MOONで使っていた重力を「魂」、「知性」の次元で発現し、「魂の引力」を極大に増加させる。
「魂の引力」が増大すると魂同士が引き寄せ合うと共に、知性空間も重力によって歪み、収縮する。

運命は引力、出会いは引力と論ずる6部DIO

ここで、アインシュタインの一般相対性理論によると、光の速度は常に一定である。
速さ=距離÷時間
である。

ここで、A地点からB地点まで光で1秒かかる空間があるとする。
そして、この空間が重力場の影響により空間が歪み、距離は一定だが空間の歪みで道のりが2倍になったとする。
(何を言ってるかわからねーと思うが、A地点からB地点までの直線距離は変わらないが、その間に下り道と上り道があるため、道のりは2倍というようなイメージだ。)
すると、空間が歪んだA地点からB地点まで光は何秒かかるかというと、なんと変わらず1秒である。
空間が歪んで道のりが2倍になっているのになぜ?
というと光の速度は必ず一定だからである。
光の速度は一定だから、なんと時間が歪む。
重力場がある空間の1秒経つ間に、重力場がない空間では2秒経過する。
時間は相対的であり、歪むのである。

長々と説明して方が、これが「時の加速」の正体である。
メイド・イン・ヘブンは「魂の重力」という知性の重力場を形成することで「光」と「全生物の魂」を引き寄せる。
光は重力場により道のりが増大するため、メイド・イン・ヘブンの重力場に囚われた生物は周囲と比べて「時間の経過がゆっくり」となる。
よって生物側、徐倫承太郎から見ると、世界の時が加速しているように見えるのである。

宇宙が加速して太陽も流れ、大地も割れる

なお、これは現実にも起こりうることで、もしブラックホールに吸い込まれると、当人の時間は減速する。
そして、当人から見て周りの宇宙の時間は加速して見えるだろう。

メイド・イン・ヘブンは「知性」の次元で物理的な距離の制約を乗り越えて、世界中の「魂」を重力場に引き寄せながら、重力増大させていく。
時の流れは数十分の一、数百分の一とどんどん減速していく。
時間の流れが減速している系にいるもの同士では、時間の流れは同じスピードのため、時間の加速も減速も感じることはない。
しかし、魂の重力に影響されない非生物は時間の流れの系が違うため、手からコップを落とすなどした瞬間に加速した時間系に入って瞬時に割れたりする。

そして、プッチ神父だけは「魂の重力」の影響をコントロールできるようで、物質の時間系と生物の時間系の間、ちょうど承太郎たちから数十倍の時間の系に身を置き続けているようだ。

メイド・イン・ヘブンの時の加速で超スピード攻撃を承太郎たちにするプッチ神父

なぜこのようなことをしているかというと、プッチ神父の目的が「宇宙の一巡」だからである。
完全に物質の時間系に身を置いていれば、承太郎や徐倫はほぼ完全に静止しており、たとえスタープラチナで時を止めようとも全く脅威ではない。
しかし、それでは宇宙が終焉を迎えるまで何千億年と時間がかかってしまう。
一説には宇宙の終焉まであと1400億年とも言われている。

今度は完全に生物の時間系に身を置いて、時間を数十兆分の一まで減速させれば、数時間で宇宙は一巡する。
しかし、同じ時間系にいる徐倫承太郎アナスイエルメェスエンポリオたちに妨害されてしまうだろう。

そのどちらも避けるため、どれだけ徐倫たちを減速させようとも常に徐倫たちの時間系より数十倍の系に自身を置いているのである。


プッチ神父は数十倍の速度で行動していることと同義であるため、その手刀は一撃必殺の威力を持つ。
しかし、スタープラチナストーン・フリーのような近距離パワー型スタンドにとって数十倍の速度は追えないレベルではない。
特にスタープラチナが時を止めれば、等しく時間は止められてしまうため窮地に陥る。
このためプッチ神父はヒットアンドアウェイで戦わざるを得ないのである。

メイド・イン・ヘブンの超速プッチ神父とそれに反応するスタープラチナ

なお、メイド・イン・ヘブンの能力の副作用と思われるが、魂の重力の影響を反発するような反重力をプッチ神父はまとっているのか、やたらと重力に縛られない飛び跳ね方が出来るようになっている。
また、メイド・イン・ヘブンは「宇宙の一巡」を目的としたスタンド能力であるため、空腹や排泄といった代謝が起こらなくなる。
徐倫たちとプッチ神父の最終戦は徐倫たちにとって数十分かもしれないが、プッチ神父にとっては数日がかりのはずだからである。


上記でメイド・イン・ヘブンは「宇宙を一巡」させるための能力と述べた。
そこに全スタンド能力を振っているため、弱点も明確である。
どんなに「時を加速」させようと、本体は強化されていないこと、そして本体が加速しているのではなく時が加速しているため、非生物による攻撃に弱いことである。

1点目は明確で、プッチ神父自体は変わっていないので溺死もするし、毒によっても死亡する。
2点目はプッチ神父が加速しているわけではないため、エンポリオの「幽霊の銃弾」のように銃で射撃されたら本体のプッチ神父にかわすことはできない。
銃口から飛び出た弾丸はメイド・イン・ヘブンの時間加速の影響を受けず、物質の時間系で動くため、プッチ神父にとっても何十倍もの弾丸の速度(プッチ神父も物質の時間系より減速しているため)で飛んでくるのである。
ただ、射撃手の速度は遅いため、目の前で射撃されるのであれば、発射される方向を予測して避けることは容易だろう。

時を加速させても銃弾は早いため事前に避けるプッチ神父

ヘビー・ウェザーの純粋酸素攻撃は時を加速しても急激に純粋酸素が集まるだけだったので、プッチ神父には回避できないのである。


最後にメイド・イン・ヘブンの無限大の加速の先について考察する。
エンポリオを逃したものの、徐倫、承太郎、アナスイ、エルメェスを抹殺して邪魔者を消したプッチ神父は宇宙の一巡を実行する。
メイド・イン・ヘブンの重力を無限大まで高めるのである。
すると、時間の加速は最大限となり、「宇宙の終焉」が訪れる。
そして、まずメイド・イン・ヘブンがあの14の言葉にある「特異点」となる。
特異点とは物理学では重力が無限大となり、空間と時間が無限大となる点のことである。
そんな無茶苦茶な空想上の存在はなんと現実にもブラックホールの中心に存在する。
この「特異点」では「時空の因果律」が無限大の影響で成立しないと言われている。
つまり「原因」が「結果」を創るのではなく、「結果」が「原因」を創るような矛盾を引き起こしうる。
これが「新しい世界」に必要な能力であり、「運命」を変える力である。

次に、ジョジョ世界は「運命」は決定づけられており、変えられない。
これはトト神キング・クリムゾンローリング・ストーン(ズ)のように未来を見るスタンドはあるものの未来を決して変えられないところからも明らかである。
さらに、ジョジョの宇宙はニーチェの思想のように固定された運命を何度も繰り返す永劫回帰をしている。
これは何度でも変えることのできない運命に立ち向かい、覚悟する「黄金の精神」の考え方からも見て取れる。
この永劫回帰を体現するように、ジョジョ宇宙はサイクリック宇宙論の宇宙である。
すなわち、「宇宙の終焉」は重力に引かれて宇宙全体が収縮するビッグクランチを引き起こし、「特異点」に収束する。
そして、また新たなビッグバンによって宇宙創世されるのである。

このサイクリックな宇宙の「特異点」を、因果律を超えた「特異点」であるメイド・イン・ヘブンと全ての魂が突き抜けて降り立ったのが「新たな世界」、「一巡後の世界」である。

メイド・イン・ヘブンによって「因果律」のくびきから解き放たれた魂たちは宇宙の始まりから終わりまでの「運命」を経験し、その「結果」をもとに「新しい世界」の「原因」、「過去」を創り出す。

次の宇宙に生きているものは到達する

これがメイド・イン・ヘブンによる「天国」到達の一部始終である。


ついでに何故「前の世界」にジョースター家の因縁を置いてこれたか、を考察する。
メイド・イン・ヘブンは「魂の重力」によって生きているものの魂だけを連れて行く。
なので、あるかどうか分からないが「死者の魂」も、「輪廻転生する途中の魂」も全て無視、「宇宙の終焉」と共に消滅させている。
プッチ神父が重視しているのは「血統による因縁」であり、これはジョースター家を殺害して「魂」を消滅させることで消し去っているのである。

ショック!エルメェスと承太郎が瞬殺

死んだものは全て「一巡後の世界」には来れないが、ほぼ同じような歴史とならなければならない。
そこで、「G.D.st刑務所で収監された娘と面会に来た父親」という事実は残るが、徐倫と承太郎は消滅しているため、たまたま似たような境遇の全くの別人がこの役に当てはめられている。

そっくりさんだが誰こいつ?の承太郎と徐倫

魂の消滅によって、「新しい世界」のジョースター家は因縁を失い、普通に生きているのかも知れないし、ジョースター家そのものが消滅しているのかも知れない。





理想的な天国とはなんだったのか?

メイド・イン・ヘブン(Made In Heaven)とは英語の成句で「天の配剤である」、神の作りたもうたものであるというところから転じて「理想的である」、という意味を持つ。

まさに、自分のやっていることは神の意思に殉じていて、私を間違った道に進まないように導いてくださいと祈るプッチ神父らしいスタンド名である。

自分のやっていることが神の導きと信じるプッチ神父

ではその理想の「天国」とはなんだったのか。
ここではプッチ神父の考える天国について述べる。

エンリコ・プッチは運命に翻弄され続ける人生だった。
双子の弟ドメニコはブルーマリン夫人により取り替えられ、それと知らず死んだと思いこんでいた。
その罪に耐えきれなくなったブルーマリン夫人の懺悔をたまたま聴いて真実を知る。
エンリコ・プッチはドメニコを探ると、妹のペルラ・プッチとウェス・ブルーマリン(ドメニコ)が実の兄弟と互いに知らずに恋仲になっていることに気づく。
妹ペルラを傷つけないために、上手く立ち回って別れさせようとするが、結果的にウェス・ブルーマリンは暴行を受けて瀕死、ウェスが死んだと勘違いしたペルラは投身自殺をしてしまう。

運命を呪いかける若きエンリコ・プッチ

若きエンリコ・プッチは誰もが良くなろうとしていただけなのに、何故「運命」は人をこんな目に遭わせるのか、「神」はどうしてこのような試練を与えるのか、打ちひしがれる。
敬虔な神学生のエンリコ・プッチはここで、「神」を恨むことはなかった。
「神」のなされること、そしてその「神」の創りたもうたこの世界に誤りはないのである。
あるとすれば、その「神の試練」を受ける側、人間側の精神の未熟さ、「覚悟」のなさが問題なのだ。
たとえ明日死ぬ「運命」だとしても、不幸が訪れる「運命」だとしても、それに立ち向かい、自身の「生」をかけて生きれば良い。
それこそが「人類の幸福」である。

この思考に辿り着いたエンリコ・プッチはDIOとの再会を決意し、やがて「天国」を目指し始めるのである。


ジョジョ世界において「邪悪」の定義は明確である。
自分の目的のために周りを踏みにじるもの、それが邪悪なのだ。
つまり、若きエンリコ・プッチが辿り着いた生き方、考え方そのものは、たとえ「運命」が決まっていても、暗闇の荒野に進むべき道を切り開く「黄金の精神」である。
しかし、その手段で周りが犠牲になっても、神への必要な生贄としか捉えず、犠牲を顧みないところが「邪悪」なのである。

そして人類全体を強制的に「黄金の精神」へと導こうとしているが、人を「運命の眠れる奴隷」から目覚めさせるのは「正義の心」に準じた生き様だけである。

ジョースターの意志でエンポリオを逃す徐倫

事実、エンポリオ徐倫ウェザー・リポートらの生き様を受け継ぎ、生命をかけてプッチ神父を止めるという「黄金の精神」でもって大役を果たした。

しかし、プッチ神父にはこれが最期まで理解できなかったのだろう。

キリスト教の考えの解釈の一つとして、神の試練、艱難辛苦は神の計画によって人に与えられているものである、という解釈がある。
そのため、人は神の計画のために全ての試練を盲目的に受け入れるべきであるとしている。
プッチ神父の邪悪さはこの思想を極端にしたものだった、とも言える。

受け継がれる意志を持つエンポリオとヘビー・ウェザー


最後にもし、最後まで一巡していたらどうなったのだろうか?
作中では、エンポリオを倒し、「時の加速」地点まで辿り着くことが出来なかったため、「完全なる循環」の宇宙を創り出すことが出来なかった。

完全に一巡することで、全ての時間と時代において「運命」を人が知る幸福になるはずだったのだろう。
もしそれが完成した場合、人類は最初戸惑うだろう。
しかし、何世代も続き、「運命」を知ることが当たり前になったとき、人は「運命」に対して「覚悟」することが当たり前になる。
ずっと先の未来に全てがつながっていることが「言葉ではなく心でわかっている」人類は「神」を信じるかの如く、自分の人生の意味を信じて、幸福に殉じていく。
まさに「神の時代」が訪れることになるだろう。

そして、プッチ神父はメイド・イン・ヘブンの能力で不老となっているので、その人類の「覚悟」の手助けをする「天使」となるつもりだったのではないか。

結局は因縁を解消できず、正義の心に邪悪は敗れる。決死のエンポリオの純粋酸素攻撃

しかし、その野望も遺された因縁、「受け継がれる意志」によってくじかれる。
「人類全体の幸福」は訪れることはなく、人々の魂は再び厳しい「荒野」へと投げ出される。
そして世界は、「失敗を恐れず、無難を避けて、困難を開拓していく」、そんな時代にはいるのである。



出典:荒木飛呂彦原作 集英社出版 ジョジョの奇妙な冒険

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8 件のコメント:

  1. すごい!!なんとなく読み飛ばしていたので納得できて感動しました!そして理論上ありえるなんて…物理って果てしないですね。どんな勉強をすればこんなに面白い物理の世界を知れるのでしょう?タカウチさんのおすすめの本が知りたいです。

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます!
      僕も調べたりしてより面白くなりました✨
      勉強してみて良かったのは映画のインターステラーとこのYouTubeですね☀️
      https://youtu.be/LmEG7KG9b0U

      削除
  2. なぜプッチ神父は不老になっているのですか?

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。よく考えてみたら、プッチ神父は不老になっていないかも知れませんね!

      僕の考察ではメイドインヘブンは生物の時が超減速する、というものなので。
      作中、プッチ神父と徐倫たちで時の流れが100倍くらい違っていそうでしたが、プッチ神父が老化する描写がなかったので、不老なのでは?と考察しました。
      ただ、時の流れが100倍早くても、あの短時間ならそれでも10年も年は取らないと計算して思いました。

      もう一つ、プッチ神父は一巡後の世界でも結構干渉をしようとしているのかな、とも考えています。これをやるには不老である必要があるのかなぁ~。
      後半は完全に妄想ですね。

      コメントのお答えは、不老にはなってない、です。本文も修正します。ありがとうございます。

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  3. 素晴らしい記事だと思いました。
    私はジョジョの奇妙な冒険がとても好きで、大学で物理を教えているので双方の視点から楽しむことができました。

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    返信
    1. コメントありがとうございます!まさか本職で物理を教えている方が楽しんでもらえているとは(^^♪
      感激ですッ❕
      理系だったのと独学ばかりですが、一生懸命調べて考えながらで書いているので、今後も楽しんでいってください。

      削除
  4. これ、解説で一番分かりやすい。

    返信削除
    返信
    1. ありがとうございます。わかりやすく解説記事を書き続けていきますね。

      削除

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